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【未経験からのデザイナー転職】はじめてのポートフォリオづくり 

こんにちは! Shinobuです。
普段はグラフィックデザイナーや講師として、大阪を中心に活動をしています。

今回は、求人でよく見かける「ポートフォリオ」についてのお話です。
ポートフォリオって何?」という人や、「ポートフォリオ作らなきゃだけど、何から始めたらいいのかな…?」という方に向けてお伝えしていきます。
また、ポートフォリオの作り方についての記事は他のサイトでもたくさん紹介されていると思いますが、今回私がお伝えすることはどこにも書いていないことだと思います。
はじめて作る方はもちろんのこと、迷子になっている方の参考になればと思います。


ポートフォリオって?

「ポートフォリオ」は、日本語で「作品集」という意味になります。
「作品」ですので、ポートフォリオは必ずしもデザインのみに限定しているわけではなく、アートやプログラミングなどのポートフォリオも存在しますよ。
その形式は、目的によってさまざまです。

ポートフォリオはどうして必要なの?

どの求人を見ても、だいたいポートフォリオの提出が必須と書いてあると思います。「まだ学びはじめたばかりなのに、何もないよ。どうしても提出しないといけないの?」と、思う方もいらっしゃるでしょう。
一度、採用者側の視点に立って考えてみましょう。
あなたが採用者になったとします。
受け取った履歴書に「IllustratorとPhotoshop可能」と書いてありました。
では、その応募者が、IllustratorとPhotoshopを使って、何が作れるのか、想像してみてください。
…いかがでしたか? 想像できましたか?
これだけの情報から応募者のスキルを読み取るのは、かなり難しいですよね。

ポートフォリオが必要な理由は、「自分の今の力を他の人にプレゼンテーションするためのもの」です。
また、ポートフォリオを見た人に「この人と一緒に働けそうだな」と、イメージしてもらうことが大切です。
まずはこれらのことを念頭に置いてくださいね。
デザインを学び始めたばかりの方が、「すごい物を作らなきゃ…!」と、緊張することはないのです。
正直に今の実力を見てもらいましょう。そして、前向きに学び続ける姿勢を表現しましょう。
多くの採用者は、そんなデザイナーを探していますよ。

ポートフォリオの種類は?

ポートフォリオには、大きく分けると2つの媒体があります。
「印刷物」と「Webサイト」です。
ご自身が希望する就職先が求めている提出方法や、希望の職種に合わせて作ります。
ではまずは印刷物から。
印刷物は、紙に印刷するという方法が基本ですが、PDFデータに変換し、データを送信するという方法もあります。
メリットについて見ていきましょう。

紙やPDFデータの提出が向いている職種

DTPデザイナーやグラフィックデザイナーなど

メリット

  • 紙面でのレイアウト能力を強くアピールできる。

  • 面接時に「即時」に見てもらえる。

  • 名刺やショップカード、フライヤーなどの実物を効果的に見せられる

  • PDFであれば、メールですぐに送信ができる。

  • デジタルが苦手な採用担当者には紙の方が好印象につながりやすい。

  • Webデザインであっても紙ポートフォリオは効果的。

印刷でのポートフォリオは、紙面でのレイアウト能力をアピールするのに役立ちます。
ポートフォリオが1冊の冊子になりますから、ページ物(複数ページの印刷物のこと)のスキルをアピールできるのですね。
また、印刷物である名刺やフライヤーなどは、実物の大きさを見せることができるので、モニタで見るよりリアルです。
Webデザインでの成果物を載せると、コードの能力というよりは、サイトデザインの能力をアピールすることができます。

ポートフォリオサイトの提出が向いている職種

WebデザイナーやUI/UXデザイナーなど

メリット

  • どこにいても簡単に自分の作品をアピールできる。

  • 拡散しやすい(SNSなどで発信できるので目に触れる人が増える)。

  • 手間を省ける。

  • 持ち運ぶ必要がない。

  • コストが低い。

  • WEB系の技術を見せる場合は必須。(STUDIOなどのサイト制作サービスを使えば コーディングより、デザインセンスをアピールすることができます。 )

今はサイトで提出することが主流かもしれませんね。
URL1本で、どこからでもアクセスして見ることができるので、便利です。
ただし、印刷物の成果物に関しては入稿の能力がかなり重要になりますので、やはり紙媒体での提出が望ましいでしょう。

以上のように、紙媒体とサイトのメリットを挙げてみました。
もともとポートフォリオは、紙媒体のものしかありませんでした。
採用側から見た紙媒体でのメリットは、見たい時にパッと見れることや、他の人のポートフォリオと比較しやすいことです。
そのことから書類審査時に、郵送してほしいと希望する企業もあります。
一方で最近の求人サイトでは、自分の履歴を書く欄に、ポートフォリオ用のURLを貼り付けるテキストボックスが用意されているものもあります。
メールでのやりとりでもサッと送ってしまえますので、「郵送する」という仰々しさはなくなりますね。
どちらも、メリット・デメリットがあるので、まずはサイトを作って、余裕ができたら紙媒体でも作る。という順番で作ってみるのはいかがでしょうか。

やっちゃいけないことって?

  • 他人の作品を入れない。

  • 守秘義務に抵触するものは載せない。

これらは人として当然のことですが、押さえておきたいことですね。
ポートフォリオは自分の作品をアピールするものですから、他人の作品を入れ込むのはもってのほかです。
また、守秘義務に抵触するものは載せてはいけません。
当たり前のことですが、作ることに一生懸命になると、これらの事が、置き去りにされてしまうこともあります。
モラルやルールをきちんと守り、信頼されるようなポートフォリオに仕上げましょうね。

作品数は何個くらいが妥当なの?

よくいただくご質問ですが、これに関しても、ポートフォリオを見る人――採用担当者の視点で考えると答えが出てきます。
やってみましょう。
あなたは、とある会社の社員です。
このたび、退職する社員の代わりに、人が必要になりました。
あなたは採用担当者に任命され、日々の忙しい業務の合間を縫って、採用業務をこなしています。
今日もポートフォリオの入った包みが届きました。書類審査の郵便物は、これで30件目です。
新しく届いたポートフォリオのファイルをパラパラと見て、内容を確認します。
ふと時計を見ると、あと5分で会議の時間です。あなたはすぐに、会議の準備を始めるのでした…。
お気づきでしょうか。

そうなんです!採用担当者は、作り手が思っているほどポートフォリオを見る暇がないのです!
パッと見の印象で、「これはいいや」と、見ずに終わるというケースもよくあることです。
ですので、「要点の絞られた、短時間でチェックできるようなポートフォリオづくりが大切」ということになります。
私は多くて10点程度と考えています。
「何個くらい必要ですか?」と、この質問をいただくタイミングって、だいたいまだ作り始めていなかったり、全然足りてないよという方が多いように思いますので、心当たりのある方は、とにかく今は作品数を増やすことに専念してください。

ルールはない。基準を作ろう

ちょっとまずは私の昔話を聞いてください。
私が初めてポートフォリオをつくったのは、学生時代でした。
通っていた学校は、死ぬほどたくさん課題の出る学校でしたので、作品数を稼ぐということに苦労はしませんでした。
卒業前になって、ポートフォリオっていうものを作ろうね!みたいな流れになって、訳も分からずとにかく作品をバババと載せたという感じでした。
今見返すと、コンセプトの説明もぶっ飛んでてよくわからんですし、冊子としての文字組みが甘く、修正したい部分だらけで失神しそうです。
この頃は、特にポートフォリオづくりに関しての細かい指導はなかったと思います。いや…たぶん…。昔過ぎて記憶があいまいですので、もししっかり指導してもらってたら先生ごめんなさい。

私の通っていた学校は、海外の美大へ留学するための学校でしたので、このポートフォリオを持ってインタビュー(面接)を受ける、という流れでした。今考えてみると、面接官は姉妹校の大学の人だったので、何も考えずにただ作品を載せたものを提出するだけで大体OKという感じだったのかもしれません。
さて、しかし当時の私は国内で就職する道を選びました。
学校は留学のためのサポートはあったものの、就職の指導は皆無だったので、就職活動に関しての知識はゼロ。ほかの学生より断然不利、全く無知な状態での新卒就職活動でした。
最近は、どの求人を見ても「ポートフォリオ必須」と記載がありますが、私が就職活動した際は特にそのような要望は企業からありませんでした。
が、このポートフォリオは自分の宝だと信じていたので、どこに面接へ行くにしても、ファイルを持って行って面接官に見てもらっていました。
そして今に至るまで、ポートフォリオが必須ではなくとも、自分で必要だなと感じたら提出をしています。
ここでようやく本題に入りますが、ポートフォリオの存在意義は「自分の今の力を相手に伝えるためのもの」で「一緒に働きたいと思ってもらうためのもの」なんですね。
ですから、自分と面接官のコミュニケーションツールを作ればいいということになります。
ググって出てくる「ポートフォリオのつくりかた」などを読むと、1ページ目に表紙、2ページ目にプロフィール、3ページ目に目次…のような情報が出てきますが、作り方は人それぞれになってくるはずだと私は考えています。
そういうわけで、ポートフォリオづくりにルールはありません。
ただし、自分で基準を作る必要はありますので、何を意識して作ったらいいのかをこの後にお話ししていこうと思います。

自分のアピールポイントや強みを知ろう

自分のアピールポイントや強みって何でしょうか。
すぐに答えられる人は少ないと思います。
それも当然のことで、私たちは毎日忙しく日々を過ごしています。
自分の気持ち、感情、言ったこと……瞬間に通りすぎる見えないことを、気が付いて、いちいち覚えていられません。
だけど、自分のことを知るってとても大切なことですよね。
転職の機会は、自分を振り返るためのとても良いチャンスだと思うんです。
自分のことを振り返らないと、履歴書を書いたりすることはできません。
ポートフォリオをつくる際に基準となる考え方の一つとして、自分の強みをアピールすることがあります。
ほかの人より、ちょっと得意なことってなんだろう?ちょっと他人よりできることってなんだろう?
そういう「強み」を盛り込むことによって、「あ、この人はこういう人なんだ」と、面接官に知ってもらうことができるわけです。
たとえば、めっちゃ作業の早い人だったら、まずは作業時間を大きくアピールして記載するなどです。
ですので、ちょっとここらで自分のために時間を割いて、自分を振り返ってみてください。

考えていることを言語化、視覚化することはとても重要です。
紙とペンを用意して、一人で集中できる環境を作ってください。
必要な人は、ハーブティーやアロマキャンドルを用意してもいいですね。
とにかくリラックスして、心が穏やかになるような環境を自分のために準備します。
紙に書いてほしいのは、自分の長所です。
誰に見せるわけではありませんから、恥ずかしがらずに書いちゃいましょう。
なかなか思いつかないよ!という方も多いでしょう。
そういう場合は、他人から褒められたことを書き出します。
やさしいね」とか「荷物持ってくれてありがとう」とか「新しいヘアスタイルいいね!」とか、日々のちょっとしたことです。
就職活動につながるかどうか分からないことも、今はジャッジせずに書き出します。
それも難しい!という人は、これから自分の長所を自分で意識して気が付くようにしていきます。
たとえば、これは私が日ごろやっていることなのですが、誰かからうれしいことを言われたり伝えてもらった時、まずはそのことに気が付くように意識します。心がウキウキする感じになるのが合図ですね。
その時に起こったことや、かけてもらった言葉を記録し、「宝の言葉」フォルダの中に保存します。
あ、これはリアルに私のPCにフォルダを作ってます。
うれしい言葉のデータベースを作っているわけです。ふふふ…

私の場合は、落ち込んだ時などにフォルダを開けて元気をチャージすることもあります。
他人からもらった言葉のプレゼントはしっかり受け取って大切にしたいですね。
こういった小さいことが、自信となり、自分の長所と認識づけられていきます。
スクールを受講中の方は、講師から褒められたりしたことをメモしておくと、自分の「得意」が見えてきます。
ぜひ転職活動に生かしてください。
そして自分の長所がわかったら、希望の企業で、その長所がどのように役立つかをイメージします。
そのためには企業のリサーチもしっかり行う必要があります。
どうしてもネットやSNSの情報に頼りがちになってしまうので、可能であればキャリアカウンセラーの力も借りて調査していきましょう。

5W1Hを意識しよう

これはモノづくりすべてにおいて意識すべきことですが、「だれが・いつ・何を・どこで・なぜ・どうやって」を想像しながらポートフォリオを構成します。
前回お話ししたとおり、面接官は忙しく、自分のポートフォリオ以外にも、たくさんのポートフォリオを確認しないといけない状況にあることがほとんどです。
ですから、ポイントを押さえて要件を伝える必要があります。
目立たせようとして、ポートフォリオをコテコテにする必要はありません。
それぞれの作品の印象を左右しかねないということもあるので、ポートフォリオ自体はシンプルに仕上げましょう。
私のポートフォリオはかなりシンプルです。見開きで左に説明、右に全面作品、という感じです。
郵送することも想定して、100均で買ってきたペラペラのA4・20枚のクリアファイルにサクサク入れています。大がかりになると、郵送代もバカになりません。
ですので、ポートフォリオ自体に力を入れるというよりは、作品作りに力を注ぐべきというのが私の考えです。

必ず乗せるべき項目とは

作品の話をする前に、ポートフォリオに必ず記載した方がいいものをお伝えします。

  • 作品名

  • 制作年月

  • 使用ソフト(バージョンも)

  • サイズとカラー情報

  • 制作時間

  • 制作の意図

これらは作品に対して、最低限、必要な情報です。
どんなソフトが使えるのか、その作品を作るのにどれだけ時間がかかるのか。
この辺りは実際の業務に関わることですので、しっかり記述して面接官に伝えましょう。
初心者の方は、制作時間にかなり時間がかかる方が多いと思います。実務を通して慣れていけばカバーすることができますので、「今の私の課題はスピードです。これからたくさん作ってスピードアップをしていきます!」というような意気込みも書いておくと良いと思います。
無理してすごい人に見せる必要はありません。ありのままを伝えましょう。

作品は実践的なものを

作品を増やしていく際に困るのが、「何を作ったらいいか」ということだと思います。
「とりあえずポスター作っとくかぁ」では、弱いのです。
昨今、SNSなどを開けば、すぐに「プロっぽく見せるデザインのつくりかた」というものが出てきます。
プロっぽく見せる技術はもちろん大切なことではありますが、これはあくまでオペレーションの技術のことだけに言及しています。
ですから、とりあえず「ポスターっぽいもの」を作っても、面接官の目には留まらないでしょう。
デザインは、自分の好きなものを作る仕事ではありません。見る人が「いいね!」と言ってくれるものを作ることがデザインです。
「架空のカフェのポスター」とか「架空のジムのチラシ」を作ろうとしても、まずは店舗のコンセプトから考えなければなりません。自分の好きなものを作るということは、適当に思いつく範囲でデザインしたらいいということではなく、マーケティングなどから物事を考える必要があり、かなりハードルを上げることにつながってしまうということです。
そこでおすすめの方法としては、クラウドソーシングなどを調べ、実際の注文内容に沿って作ることです。
この方法だと、より実務に近い作品作りができますし、余裕があればクラウドソーシングに応募して、あわよくば採用されたら実績になります。
いいことづくめなので、どんどんチャレンジしていただければと思います。

最後に…

今回は、ポートフォリオづくりの概要とコアな部分について解説をしました。
モノづくり全てにおいて言えることですが、ゴールや基準を最初に決めておかないと、途中で脱線したり迷子になります。
ゼロから始めるポートフォリオづくりには時間がかかりますので、計画的に転職活動を進めていってください。
みなさんが、自分のやりたいことを生かして、たのしく仕事ができますように。